青蝶夢 *Ⅰ*

冷たい瞳

伊吹さんと二人きり
近所のレストランで食事を
済ませ、歩調を合わせ
並んで夜の街を歩く。

暦は、もうすぐ初夏の訪れ

それなのに最近は、風の強い
肌寒い日が続き、上着を
手放す事ができない。

伊吹さんは、パーカーを
身に纏い

私は、芳野さんに貰った
コートを着る。

「上着
 買えばよかったのに?」

「いえ、この時期に
 上着を買うなんて
 勿体無いです
 もうすぐ、暖かくなって
 着れなくなるもの

 それに、この
 スプリングコートを
 ヨシノさんに頂いたので
 寒い日は、これで大丈夫」

「その上着 
 今の、可愛いヒイロにも
 案外、合うもんだな」

可愛いって、確かに今
貴方は言った?
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