青蝶夢 *Ⅰ*
「ヒイロ、辛くないか?」

伊吹さんの言葉は、私の胸に
響いた。

瞳に、涙が溢れる・・・

「ヒイロ・・・」

「辛くないって言ったら
 嘘になります
 でも、彼の事が好きだから
 
 私の元に
 帰って来てくれるなら
 私は、彼を待ち続けます」

「そうか・・・
 
 出会った頃のアイツは
 あんな奴じゃ
 なかったんだけどな

 俺と同じ夢を持って
 専門学校で学んでいた
 昔が懐かしいよ
 
 うまかった、ごちそうさま」

席を立つ、伊吹さんは
食器に手を触れた。

「イブキさん
 後は、私が片付けます」

「ありがとう」

伊吹が食べ終えた食器を
流し台へと運ぶ秘色を
彼は、見つめる。
< 168 / 434 >

この作品をシェア

pagetop