青蝶夢 *Ⅰ*
「落ち着いたなら
 席につく方がいいわ
 ここは、邪魔だから・・・」

「そうだな
 行こう、ヒイロ」

私は、伊吹さんに手を引かれて
席へと向かう。

そんな二人の、後ろを歩く
茅野は、背中に誰かの強い視線
を感じた為、振り返ると
入り口のドアに、自分の瞳と
そっくりな瞳を見つけた。

「ヨシノ・・・?」

茅野は、慌ててドアを開けて
辺りを見渡したが、どこにも
芳野の姿は無かった。

ガラスに映った自分の姿を
芳野だと見間違えてしまった
だけだと、彼女は開いたドア
を、ゆっくりと閉めた。

私は、気づけなかった・・・

ヨシノ・・・

貴方が、本当は私の為に
あの場所へ戻って来て
くれていた事に

気づけずにいた。
< 234 / 434 >

この作品をシェア

pagetop