青蝶夢 *Ⅰ*
「私、手、洗ってきます」

二人きりで会話を楽しみながら
お箸を進めて食べても食べても
減らない料理・・・

「作り過ぎたかなぁ」

芳野の声が、聞こえる・・・

『ほら、イブキ
 お前も食べろ
 残しちゃ作った奴に悪い』

そう言って、以前、私が
食べ残したお弁当を食べる
貴方の姿を思い出して

貴方のいない寂しさに
二人の心は、締め付けられて
いく。

二人は、あの日から
芳野の事には、決して
触れない、話さない。

なるべく

明るく

楽しく

毎日を過ごしているけれど

それは、そう振舞っている
だけ・・・

私も伊吹さんも

本当は、寂しい。
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