青蝶夢 *Ⅰ*
その裏舞台は、決して
華やかなものでは無く

私の瞳に映るのは、只管
ウォーキングをしている姿。

私から見れば、どこがどう
おかしいのか、さっぱり
分からない。

とても綺麗に歩けているように
思えるのに、講師らしき人は
モデルの歩みを止めさせて
もう一度最初からと何度も
言い続ける・・・

モデルの顔が、一瞬だけ
苦痛に歪んだが
彼女は、また歩き出す。

加賀さんは、講師を呼び止めて
『私を一度歩ませてみて』と
指図をした。

「ヒイロ、歩いてみなさい」

皆の視線を受けて、ドキドキ
しながら、私は歩く。

「もっと
 背筋を伸ばしなさい
 顎は、引く
 体は、左右に揺らさない」

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