青蝶夢 *Ⅰ*
でも、それはできない。

許されない・・・

伊吹が大切にしている
秘色をいっぱい傷つけて
悲しい想いをさせて

どの面下げて
あの家へ戻ることができる。

『伊吹が
 大切にしている秘色』

違う・・・そうじゃない

俺の、大切な秘色・・・

いやっ、分からない・・・

今の俺は、本当の
自分の気持ちが分からない。

窓の外に広がる世界を
見つめながら、煙草を吸う
芳野の胸元に回された
女性の腕。

裸にシーツを纏い

彼女は、芳野の背中に
身を預けて言う。
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