青蝶夢 *Ⅰ*
席を立つ芳野の肩に彼は
手を置いた。

「君、ちょっと待って・・・」

肩に置かれた左手

薬指に輝く指輪

それを、指差して芳野は言う。

「奥さん、大事にしなよ
 勘定、宜しく」

夜道を歩く、芳野は携帯電話を
手に、誰かに連絡をした後

タクシーに乗り込む。

「運転手さん
 窓、開けていい?」

「はい、どうぞ」

夜風が、肌に気持ちいい・・・

タクシーに揺られながら

芳野は、目を閉じ

遠い昔を、思い出す。
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