青蝶夢 *Ⅰ*
男とキスするなんて
考えただけでも
気分が悪くなる。

そう思っていたのに

この感情は何だ?

芳野は戸惑う・・・

伊吹は、その後も芳野の事を
茅野と間違えている様子だった
が、芳野は気にも留めなかった

正確には、考えないようにした

タクシーの中
芳野の肩にもたれて伊吹は眠る

・・・無防備な姿。

伊吹の唇が、薄っすらと
赤くなっている。

それは、俺の唇が触れた
証拠なのか・・・

『やめろ
 もう、何も考えたくない』

芳野は、頭を左右に
何度も振った。

あの日から、一度も訪れる事の
無かった、伊吹の住む部屋の前
に、芳野は立つ。

そして、ドアの取っ手に
触れて引いてみたが
さすがに、今日は鍵が
閉まっていた。
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