青蝶夢 *Ⅰ*
「どうして
 帰って来ない?
  
 誰かと一緒だったのか
 待ち合わせか?」

「ううん、ちがうよ」

「じゃあ、何してる?
 待ってるから
 早く帰って来いって
 言っただろう・・・」

「だって、貴方には
 カヤノさんが
 いるでしょう?」

私は、何を言うつもりなの?

私の瞳いっぱいに
涙が溢れた・・・

「ヒイロ・・・?」

貴方は私の顔を見ようとするが
私は、貴方の肩に回した手を
今よりも、もっときつく締めて
顔を隠した。

「どうした?」

「カヤノさんに
 邪魔されたくない・・・」

秘色・・・

それ以上は

言ってはいけない。
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