青蝶夢 *Ⅰ*
伊吹さん、貴方が
私を愛してくれない事は
最初から分かっていた。

それは、茅野さんだけが
理由じゃない。

だって貴方は、本当の私を
唯一、知っている人だもの。

義父に、汚された私の事を・・

二人の思い出の場所で
貴方に出会った、あの日まで
私は、義父から逃れずに
アイツの傍に居続けた。

それが意味する事は
私が、どれ程までに
穢れているかという事だ。

貴方なら、分かるはず・・・

「イブキさん、ありがとう
 私を、あの場所から
 連れ去ってくれて
 
 離れていても
 貴方は、私にとって
 かけがえの無い人です

 貴方に出会えて
 良かった

 もう、この手を放していいよ
 私は、大丈夫だから」

「はなせない・・・」

「イブキさん
 駄目だよ
 放さなきゃ・・・
 
 同情なんていらない」
< 301 / 434 >

この作品をシェア

pagetop