青蝶夢 *Ⅰ*
「エビを食べられない人の
 気が知れない
 はい、アーンして?」

「エビ、好きなの?」

「うん、大好き」

満面の笑みを浮かべる私が
差し出したスプーンの上で
プリプリのエビが食べられる時
を、今か今かと待っている。

「わたし、とっても
 おいしいよ」

私が、海老の気持ちを代弁する
と伊吹さんは、しかたなく
大きな口をあけた。

「うそ、うそ
 ムリしなくていいよ
 私が、イブキさんの
 エビ、全部食べてあげる
 ねっ」

私は、その海老をパクリと
食べた。

そんな私の頬に

貴方はキスをした。
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