青蝶夢 *Ⅰ*
秘色を一人、あの家に残して
茅野の部屋へ向かった伊吹は
部屋に着くなり、すぐに帰る
と言い出した。
 
「ごめん、やっぱり帰るよ
 昨日、今日、家から
 出て来たばかりのヒイロを
 見ず知らずの土地で
 一人きりにはできない
 
 すまない、カヤノ」

「そんなに彼女の事が
 心配なの?
 18歳って言えば、一人で
 留守番ぐらいできないと
 おかしいよ
 
 大丈夫だよ」

私が何度、そう言っても
あなたは帰ると言い続けた。 

でも、そう言われれば
言われる程

茅野は、伊吹を彼女の元へ
帰したくない。

無理に引き止め続けていた。
 
しかし、話しかけても上の空で
少しも楽しくない。
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