青蝶夢 *Ⅰ*
部屋のドアが開く。

「ほらっ、コーヒー・・・」

芳野は、珈琲を
テーブルに置いた。

私は、空っぽの鞄を広げて
床に座り、俯く・・・

「ヒイロ、荷造りなら
 俺がしてやる」

「・・・何もない」

貴方は、しゃがんで片膝をつき
私の顔を覗き込んだ。

そして、流れる涙に指先で触れ
その腕で私をきつく抱きしめた

「何も・・・ないの
 ここにある物、全部
 イブキが私の為に
 買ってくれた物ばかり
 
 ヨシノ・・・
 持って出ても
 いいのかなぁ?」

「お前が持って行きたいなら
 全て持っていけばいい」
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