青蝶夢 *Ⅰ*
「でも、私はイブキを捨てて
 貴方と、この家を出て行く
 ・・・・・・」
 
「ヒイロ
 思い出まで
 捨てることない」

私は、芳野の言葉に
何度も頷いた。

実家に捨てて来た
たくさんの思い出。

父に買ってもらった
お気に入りの
青い蝶の髪飾り・・・

もう今は、触れる事もできない

「ヒイロ、ほらっ
 これ飲んで、落ち着け」

私はベッドに座り、芳野の
淹れてくれた珈琲を受け取って
飲んだ・・・

「甘い・・・」

その味は、伊吹の珈琲の味に
とても似ていた。

「おいしいよ・・・
 とっても、おいしい」

貴方は、微笑んだ。

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