青蝶夢 *Ⅰ*
幼い頃から、思っていた。

同じ顔でも、芳野は
女の私よりも
数倍、綺麗だった。

芳野と茅野の母親は、子供の
世話など全くみない人で
二人の世話は、母方の祖母が
全部してくれていた。

彼女は、二人にお揃いの洋服を
用意するだけ・・・

二人は、母親のアクセサリー
のひとつだった。

同じ顔の芳野と茅野を
祖母は、よく見間違えて
ピンク色のスカートを芳野に
ブルー色のズボンを茅野に
履かせた。

「おばあちゃん、ちがう・・」

「おばあちゃん、ありがとう
 ほらっ、あっちで遊ぼう」

祖母から離れた場所で
芳野は言う。

「おばあちゃんの手を
 煩わせちゃいけない
 ・・・」
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