青蝶夢 *Ⅰ*
「こんなに

 綺麗な人が
 
 この世に、もう一人?」

私は、見つめる。

美しい、貴方を・・・

私の言葉を受けて、芳野さんは
失笑するのだった。

細く長い人差し指と中指の間に
挟まれた煙草を銜え、吸った後
煙を吐きながら、吸殻を
灰皿に押し付けて捨てる。

貴方は、ポツリと言う。

「俺が、きれい・・・?」

そして、声高らかにあざ笑う。

「ハハッ、笑わせんなよ
 
 俺なんか
 神が創った、失敗作さ

 神に、愛されたアイツは
 俺なんかが太刀打ちできない
 程に美しい・・・
 
 まっ、お前も会えば分かるさ
 カヤノを見たら、イブキへの 
 想いも消えてなくなる」

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