青蝶夢 *Ⅰ*
あのドアを出て行く貴方の
寂しい、後姿を思い出し

その背中に
寄り添ってあげたい、私。

今夜、貴方ともう一度・・・

くちづけたいとさえ
私は、想うのだった。

でも、その想いは恋ではない。

彼の寂しさに、同調しただけ。

それだけ・・・

伊吹の部屋に戻った、芳野は
眠る伊吹を見つめて

深い

ため息をつく・・・

伊吹の眠る布団の、隣に
敷かれた、きれいなままの
冷たい布団。

その上に、横たわり

芳野はボーっと天井を
見つめる。

眠る貴方に

朝日が、燦燦と降り注ぐ。

本当に、この想いは

恋じゃないの・・・?


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