不思議の国のアルス


隣に居るシロンの横顔を見てから
帽子屋は夜空を見上げます。

虫の鳴き声しかしない
静かな夜。


シロンが懐中時計の蓋を
閉めると、帽子屋は
シロンに尋ねました。


「あの方には何処まで
話されたのですか?」

「まだ全然。」


シロンは懐中時計を
片手でカチャカチャと
弄りながら言いました。


「…初めてだったんだ。」

シロンは口元を緩めながら
続けます。



< 82 / 108 >

この作品をシェア

pagetop