不思議の国のアルス
「俺の事、正面から
見てくれる奴ってさ。
俺に近付く奴等って皆
自分の事しか
考えてねえしさ、
…なんて言うか、
俺が何かすると
直ぐに表情コロコロ変える
アイツと居ると
結構楽しいんだわ。」
恥ずかしそうに、
けれど嬉しそうに
はにかむシロン。
でも、その表情には
何処か悲しみもありました。
「なぁ、お前は
“人間になりたい”って
思ったことはあるか?」
シロンは帽子屋に訊きました。
「いいえ。ありません。」
「そっか。」
帽子屋の答えに
そうだよなぁ…と
呟きながら
シロンはただ、
夜空を眺めました。