イケメン的★カントリーライフ
田んぼに囲まれた細い道を、私は杉田と名乗るヤンキーと、彼の飼い犬と思われる犬と一緒に歩いていた。

「あのー、杉田……さん?」

ヤンキー杉田の横顔を除きながら、私は遠慮がちに声をかける。

「なーに!」

そして次の瞬間、満面の笑顔が向けられる。
なんだか人懐こい犬みたいだ。
「ナツってうちのおばあちゃんですよね…高宮ナツ。で、杉田さんは私のお迎え係って感じですか?」

「そ。マジ急いだんだけど、ちょっと遅くなっちゃってさ。実はチャリンコがパンクしちゃったんだよねー」

あはは、と耳の後ろを掻いた彼に、なんとなく親近感を覚えた。

なんでだろ?

「しかもコイツ……スバルってんだけど、迷惑かけちゃってごめんね。ビックリしたっしょ?」

ヤンキー杉田は私たちより少し前をトコトコ歩く犬を顎で指して言った。

「あー。はい」

ビックリしたよ。そして女の子の出迎えにジャージのあんたにもビックリだよ。

と、ツッコミながらも、私はなんだか彼の人のよさそうな感じ好感を持ち始めていた。

「ていうか、すみません!荷物持ってもらっちゃって」

私のキャリーは、彼の肩にどっかりと乗っていた。
小さめのタイプではあるし中身のほとんどは服だったから、そんなに重くはないだろうけど、やっぱり持ち上げてもらっては気が引ける。

「重くないですか?」
と訊ねても、よゆー!という言葉と相変わらずの笑顔しか返ってこなかった。

そもそも転がさないなんてキャリーの意味がないのだけど、このでこぼこ道じゃアスファルトや駅のホームみたいにはいかない。担いでしまった方が楽と言えば楽なのかもしれない。

「俺んち材木屋だったっしょ。だから力仕事は任せろよ!って、覚えてないかー」

確かにそう言われれば、ジャージが捲られた腕はかなり筋肉質っぽい。
やっぱり、記憶には無いけれど。
「すいません、でも杉田さんのおかげで助かります」

「そんな丁寧じゃなくていーよ。あと、杉田サンじゃなくて耕平のがいいかな。それから敬語禁止ね!」

「わかりました」

「あ、またホラ」

急なタメ口強制に戸惑っていると、彼が不満気な顔をした。

「えと……わかった!」

「ハイ正解!」

そしてまた満面の笑顔。

フレンドリーなんだけど、チャラい訳でもなくて、不思議な人だ。
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