【長】はるいろ


「…彼女、作らないんですか?」


恐る恐る質問すると、彼はお茶を一口のみ、ゆっくりと微笑んだ。


コトン…と静かに置かれたカップ。

それと同時に彼は口を開いた。


「彼女とか作らないほうがいいから、俺は。」


どういう意味?


そう尋ねたいけど、聞ける雰囲気じゃない。


彼は、聞かないで、と言うように微笑んでいるような気がしてならない。


「…だから君も、俺よりもっといい人を見つけな」


なんでそんなことを…。


ここに来た時点で、あたしの気持ちがバレるのは別にいい。


でも、どうして?


いっそ、さっきの女の人みたいにあたしのことを傷つければいいのに。


そのほうが、きっと簡単にあたしを離せるのに…。


「あたしは、たしかにあなたのことなにも知らないです。

 でも、止めろと言われて止めれるなら、ここには来てません」


そうだよ。


そんな簡単な想いなわけがないんだ。


バンッ、とあたしはテーブルに手をつき、まえかがみになった。


彼までの距離、残りほんの数センチまでつめた。




「あたしを彼女にしてください」




「えっ!?」


「彼女いらないなんて、言わせないくらいあたしのこと好きにさせます!」


「……ぶはっ!!君、変わってるな」


あたしの顔を見るなりお腹を抱えて笑いはじめる。


なにが面白いのか分からないけど、そんな笑顔に胸が高鳴ってしまう。




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