【長】はるいろ
「兄貴〜、お客さん」
トントン、と叩かれたドア。
返事を待たずに悠夜さんはドアを開けた。
あっ、まだ心の準備が。
緊張はマックス。
あたしは、ギュッ、と目を閉じ彼の声を待つ。
「誰、その子?」
ゆっくりと開いた視界のすぐ側には、彼の姿。
ドキン…
苦しくて、息が出来ない。
ただ目が合っているだけなのに。
「ちょっと〜光希、誰よその子?」
眠たそうに彼の部屋のベッドから起き上がった下着姿の女性。
…やっぱり。
二人が言ってたのは、本当のことだったんだ。
「あのっ…」
「もしかして、隣の小松さんの妹さん?」
「えっ、あっはい!」
フワッ、とした笑い方に、また胸が騒ぎはじめる。
「あっ、あたし、小松ハルです」
少しでもあたしのことを知ってもらいたい。
緊張しながらも、ちゃんと自分の名前を言えた。
「よかったら話そうか?」
「…えっ、あの……」
下着姿の女性を置いて、彼はあたしの元にきた。