男ごころのうた シーズン2
縦と横
何度目かのデートで
別れぎわ
きみを小さくにぎった指を引いて
きみにキスを迫ったね
あのときのぼくは
それまでの全人生の
すべての勇気をふりしぼって
きみにキスをしようとしたんだ
そんなぼくの顔を、気持ちを、よけるようにして
きみは顔を縦に動かして、避けた
それを見たぼくは
“ああ、きらわれたな”
そんな悲しい気持ちになって
きみとわかれた
あれから十五年
きみといっしょになってからも、はじめて聞いた
“あのときははずかしかったの。イヤじゃなかったんだよ”
“イヤなら顔を、横にふるはずでしょ”
そんなこまかい女ごころ、ぼくにはわからないよ
今も
これからも、きっと
ずっと、このままの未来を