禁煙する倭ノ宮桔梗と泣き出さない〝たたりもっけ〟
私は桔梗さんの正面まで歩いていき、ショルダーバッグからダブルクリップで留めたファイルを取り出しました。桔梗さんに見えやすい向きで置いて、訊ねます。
「桔梗さんは、どう思われてますか?」
「……ふむ」
それに、どれだけの意味と効果がありかは知りませんが、桔梗さんは右目のモノクルを人差し指で二度、とんとんとつつきました。
資料に目を落とし、なにかを高速で思案しているような、奥行きの深い表情。モノクルのふちをつつく指の動きが連続し、間隔が短くなり、速くなっていきます。桔梗さんの脳みそは、どれだけの速さでどれだけの事柄を思考しているのでしょうか。どんな突拍子もない答えが吐き出されるかわからない……自然と、私は緊張していました。
そしてやおら、彼は懐や袂の中を探り始めました。まさか、たったこれだけの時間、少し資料に目を通しただけで、なにか事件にまつわる重大なものを思い出し、しかもそれを今持っているというのでしょうか……!
彼は、はたと動きを止め、おやつ抜きを宣告された子供のように肩を落としました。
「そういやわし、禁煙中だったの」
「そっちかよ!」
キセルを探していただけとは、なんと思わせ振りな。
「桔梗さんは、どう思われてますか?」
「……ふむ」
それに、どれだけの意味と効果がありかは知りませんが、桔梗さんは右目のモノクルを人差し指で二度、とんとんとつつきました。
資料に目を落とし、なにかを高速で思案しているような、奥行きの深い表情。モノクルのふちをつつく指の動きが連続し、間隔が短くなり、速くなっていきます。桔梗さんの脳みそは、どれだけの速さでどれだけの事柄を思考しているのでしょうか。どんな突拍子もない答えが吐き出されるかわからない……自然と、私は緊張していました。
そしてやおら、彼は懐や袂の中を探り始めました。まさか、たったこれだけの時間、少し資料に目を通しただけで、なにか事件にまつわる重大なものを思い出し、しかもそれを今持っているというのでしょうか……!
彼は、はたと動きを止め、おやつ抜きを宣告された子供のように肩を落としました。
「そういやわし、禁煙中だったの」
「そっちかよ!」
キセルを探していただけとは、なんと思わせ振りな。