禁煙する倭ノ宮桔梗と泣き出さない〝たたりもっけ〟
「では、ゆこうかの」

「はい」

「あの、ゆくってどちらへ」

「そんなもの決まっとるよ?」

「……まさか」

「ふむ。辻井さんでも簡単に予想はついたの。では参ろう。話は歩きながらでもできるしの」

ぱち、ぱちち。

店の外の街灯が、ついたり、消えたり、乾いた音をあげていました。真っ黒い湖のように静かな路面が、白、黒、白黒黒、白黒黒黒白、黒と光って……私にはそれが、まるで蛾が羽ばたくような、気味の悪さを感じました。

「大丈夫。心配せんでついてくるといい。取って食われはせんさ」



< 56 / 92 >

この作品をシェア

pagetop