禁煙する倭ノ宮桔梗と泣き出さない〝たたりもっけ〟
「考えれば、すぐにわかることじゃて。 辻井さんや、この事件で一番の不審点はなにかの?」

「それは……やっぱり、一週間の空白ですかね」

「惜しいのう。正確には、その一週間の間に、警察へ通報した家族がおらんということじゃ」

「へ?」

「お前さんもジャーナリストなら、ちゃんと思い返してみぃ。この事件、子供が遺体となってから通報した家族はあれど、子供が失踪している間に通報した家族はおるのか?」

「……」

「おらんわのぅ。それはなぜかの? お前さんの記事にも書いてあったが、変わり果てた姿の子供を前に泣き崩れる両親ばかりじゃというのに。なぜ、子供が消えたその日に通報せんかったんかの?」

たしかに……まったく失念していました。いえ、そこは私はてっきり、どの家族も警察に通報しているものとさえ思っていたのです。ですが、考えてみれば子供が失踪している最中の家庭へ取材をしに行ったことは、ただの一回もありません。すべて喪中の席でした。子供が消える期間は一週間。それだけの時間があれば、私もスケジュールを空けることはできるのに……。

ぼり。ばり。

「お前さんが、その一週間のうちに取材にいけなかったのは、警察からの情報がすべて、事件後だからじゃろ」

ばき。ばりぼき。

「……そう、です」

「ま、じゃろうな」

< 63 / 92 >

この作品をシェア

pagetop