禁煙する倭ノ宮桔梗と泣き出さない〝たたりもっけ〟
桔梗さんが、立ち止まりました。

私は、大きく深く、長く、それでいて細く、息を吸い、一気に吐き出しました。

「子供達を一週間も監禁していたのは、その親御さん達なんですね」

「ご名答。それが、ただの現象じゃよ」

「でもどうして!? 子供を愛してるご両親ばかりなのに、どうして!」

「言うたはずじゃよ、儀式なんだわ、これは」

「儀式……」

さっきも出た不穏な単語が、私を黙らせます。桔梗さんは私の手を引いて再び歩きだし、ため息を漏らしました。

「お前さんも警察も、まったく大切なものを見落としておる。人間、意味がわからんものを目の当たりにすると、まずそちらを横へほっぽってしまうからいかんのぅ」

「大切なものって」

「どの被害者も持っておったのだろう」

「?」

「土くれでできとったそうだのぅ。古銭」

「あ……、あーっ、あれ! 意味あったんですか!!」

「ふつう、あれほど重大な意味を持つものはないと思うがのう」

「というと?」

メモを構えてもおかしくないくらい、気持ちが復活してきました。いつのまにか私は、桔梗さんに手を引かれるのではなく、横に並んで、彼の顔を見上げていました。
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