禁煙する倭ノ宮桔梗と泣き出さない〝たたりもっけ〟
「ことの真相はこうじゃ。幸せを願った親が子供を殺し、一週間監禁した。古銭を持たせ、軒先に放り捨てた。じゃが、儀式は失敗し、子供は死んでしもうた。それを、親が悲嘆した」

「そんな、淡々と言わないでくださいよ……」

「事実など、わかってしまった途端、淡々としたもんじゃよ。問いに始まり答えに終わる。現象という時間は常に、つまらんほど一方通行なんだわ」

「……」

「納得、しておらんようじゃね?」

「してないというか、したくないっていうのが、本心です」

「ほーかほーか」

桔梗さんが、また立ち止まりました。顔を上げるとそこはいつの間にやら、夕暮れに訪れた土屋家。まだそんなに遅い時間ではないのに、家の明かりは一切合切消されていました。真っ黒く浮かんでいる四角は、窓でしょう。あんまり見つめて、窓の向こうを人影がすぅっと横切ったら怖いので、慌てて桔梗さんに振り向きます。

彼は、顎をさすって「さて、はて。ふむ」と何事か考えていました。が、なにかを自得した顔で、一度だけ、頷きます。
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