禁煙する倭ノ宮桔梗と泣き出さない〝たたりもっけ〟
「ふふ。お前さんもたいがい、変わり者じゃの。いや、おもしろい」

「なっ。変わり者って、桔梗さんに言われたらおしまいなんですけど!」

「いやいや、辻井さんのその一直線な心意気は、俺も香蘭も惹かれておるのよ。褒めとるんよ、これ」

「褒めてるって……なんですか、急に」

「んむ、だからのぅ、つまり、この倭ノ宮が一肌抜いでやろうというわけじゃわ」

「はい?」

また、桔梗さんが懐を探ります。出てくるのはやはり、よっぽど気に入ったのか、それしか気を紛らわせられるものがないのか、シガチョコです。

タバコを一本出すように、シガチョコを出してくわえた桔梗さんは、

「よいかの辻井さんや」

それに指をかけました。くわえたまま、折る準備をしています。珍しく真剣な目で、私に視線を流してきます。

「『無声』足す『五分』の和が、『停止』じゃ」

「は? あの、意味がよく……」

「五分間、声を出してはいかんということだわの」

「え、ちょっとっ」

「〝創造式〟」

「桔梗さん!」

ばき。
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