禁煙する倭ノ宮桔梗と泣き出さない〝たたりもっけ〟
……見ていられません。今が夜で、家の明かりがついていなくて、本当によかった。月明かりが差し込む程度で、本当に。

これのどこが、子供の幸せを願ってなのか、私にはわかりません。ただ、こんなバカなこと、本当に人間が、一介の家族がやっているんだという、強制的な理解を得ました。

人間は、夜叉になる。愛しているものの、ためならば。

けれど……やっぱり、納得なんてできるはずがありません。ましてや、土屋夫人のように、笑っていることなど。

これ以上ここにいても、憐れみのあまりに私がおかしくなってしまいそうです。見たくはなかった、けれど、見る覚悟を決め、見つからないことを願いながら、結局は見なくてはいけないものを見た。なるべくして、という言葉が、頭に浮かびました。

なるべくして……ともきくんはなるべくして、ああなったのでしょうか。そんな。親の勝手です。でなければ、ドアに残されたアレはなんだというのでしょう。

――そういえば、二人はどこでしょうか。腕時計を見ると――ああ、秒針がぴくりともしませんが――まだ十時前です。まさか、もう眠ってしまったのでしょうか。

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