禁煙する倭ノ宮桔梗と泣き出さない〝たたりもっけ〟
ほかの事件の子供達が、死後一週間だったのに対し、ともきくんは死後四日から五日でした。一週間経つ前に遺体が発見されたわけではありません。その証拠に、足の傷はほぼ一週間、経過していましたから。

「言うたのぅ、俺。死した童子の魂は泣いて、たたりもっけとなる。あの子は、まだ泣いておらんかった。世では……生き霊と呼んでおるがねぇ」

「似たようなもんですよ、あんなことになっちゃったら」

ともきくんと旦那さんは奥さんの狂気に殺され、その奥さんは、ともきくんの狂気によって、自殺しました。土屋家は、あの晩で息絶えてしまったのです。

「幸せを願って……か。桔梗さん、あれは、どこまでが正しかったんでしょう」

ああ、なぜでしょうね。改めてみると、今日の太宰的頬杖は、妙に風格があってカッコいいじゃありませんか。

「相手に幸せになってほしいという気持ちに、正解はないんじゃよ。ただ、その手段がこの世界にとって、理解されるか、否か。もっとも、結果の伴わん手段は、問題外だろうがの」

「じゃあ、あの間違った手段は、回避できなかったんでしょうか。それか、今からでも、桔梗さんのアレで……!」

「……見せてしまったものは今さらごまかす気はないが……俺が使えるんは、〝創造式〟なんだわ。〝改竄式〟は、千里ヶ崎の専門分野でね」

その名前は、いつも桔梗さんがどこかへトリップして、目覚めたときに聞くものでした。
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