sir.happiness
直接言わないのも、どこか爽やかな気がした。実感が湧かないというのは、どれだけ恐ろしいことか。
ぼくは怒りではない何かを『辞職者』と書かれた紙にぶつける。数秒後にはぐちゃぐちゃにちぎり捨てられた、ぼくを戒めた紙はゴミ箱行きとなった。
そして、静かに思う...
このことを、きみに話すと、どんな顔をするだろう。急に湧いた欲望が、消えることもなく、ごくわずかにぼくの心を蝕んでいく。
はやく満たさなければならないらしい。
でもぼくはこの話はとっておく。なぜって、その質問はぼくの全てを見透かすことなる。
だから言わない。きみにこの話をするとしても、ぼくはこのときの気持ちは明かさない。理解された時が一番怖いから。
その日は、カバンも持たずに、早足に家に帰った。きみの待つ家で、自分でも震えるくらいの余韻で、感情を満たすために。