水滴
ひまわりは健気だと思う。

その重たい美しい大輪を一生懸命、太陽に向けて。
まるで太陽に恋をしてる様だと例えた人もいた。

眩しくて、明るい明るい太陽に。

そして、最後には重くなっていく花に負け下を向く。
その時には沢山の種を蓄えている。太陽に精一杯、惜しみなく顔を上げたご褒美みたいだ。

届かない恋に例える人もいるが、私はそうは思わない。
太陽に恋いこがれて最後には下を向いてしまうなんて例えは美しい黄色の大輪を咲かせるひまわりには似合わない。

自転車を漕ぎながら、そんな考え事をする。
ゆるやかな坂に根をあげて、休憩がてらひまわりの写メを撮る。

あれから何度めかの夏が来て、この時の私はまだ病気の自覚がはっきりない。
友達もできて、仲間が沢山いて、仕事も楽しくて、ボランティアまで通ってる。

はたから見たら、幸せそうな普通の人だっただろう。
自分でもそう勘違いしてた。
生きる事は葛藤だらけだったけど、落ち込んで泣く事もあったけれど、それ以上に楽しい事が沢山有った。

しばらく離れていた姉とも、連絡を取る様になっていた。
正確には、避けられる事がなくなってきた。

おかしくなっていく私から姉は離れていった。
うつむき出した私を忌み嫌った。

専門を辞めてからは、好きに生きなと言ってはくれた。
意識が無くなって入院していた私にずっと付き添ってくれたと聞いた。

寮から出て行き場所がなくなって同居もしていた。
実家は良くないと母の判断だったのだろう。

フリーターは辞めていた。正社員ではなかったが、それに近いものだった。

それ以前は仕事を転々としていた。
仕事の都合で同居は解消され、私は独り暮らしをしていた。

母が月1ほどで泊まりにきていた。
私を見張っていたのだろう。
死なない様に。

そのたびに憂鬱になり、落ち込んだ。
母は私にとって、受け入れる事のできない存在だった。

止めてと言っても、聞き入れてくれない。ただただ腹が立った。
洗濯は自分でしたかった。勝手に掃除をされるのも困った。

何故と聞かれても解らない。
けれど、今なら解る。
ただ、母が苦手だからそうされることに抵抗を覚えたのだ。

そして、怒る私を無視して、止めて欲しいと言う事をやった。
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