水滴
本当の現実って何だろう。
寝て起きて食事して、歯磨きして、お風呂に入って。
仕事や学校。主婦業。

皆それぞれの生活があって、皆それぞれ苦労して生きてる。

楽しい事も、大変な事もある。

何が言いたいかって、現実と頭で考えてる事の一線。

生活しながら皆考えてる事はある。
声に出さないから聞こえないだけで、沢山の感情が渦巻いてる。

よっぽど余裕がない時や集中している時でさえ、人は物を考える。

私には、現実と考えてる事の一線が引けなかった。
実際には引いていたから、正しく言うと頭の中では引けてなかった。

私の心は、それで悲鳴をあげた。
毎日が混乱だった。

戦いだった。

今思うと、何と戦ってたかさえ覚えていないけど。

本当の現実は、混乱のない平和な世界だった。

寝て起きて、食事して歯磨きしてお風呂入って、仕事して。
辛い時もあるけど、楽しい時間もある。

単純とまでは行かないけど、そんな世界だった。

昔に比べれば、生きるのは案外簡単だった。
ただ、どう生きるかは自分次第だとは思うけど。

駄目な大人になりたかった。
生きるのが大変で、混乱した中にいたからしっかりした生き方はできないって自覚はあった。

今はちゃんと大人になりたい。
苦労して築いた今までの自分を無駄にしたくない。
欠点はもちろんあるけれど、それも含めて自分を受け入れたい。

周りには良い方に変わったとか、成長したとか言われた。
病気を自覚してきちんと治療を受けてることが、そんな評価に繋がるとは思わなかった。
辛くてふさぎ込む事もない。
余裕があるから沢山笑える。
前向きになれる。

成長したんじゃない。元に戻っただけ。
楽になっただけ。

ちょっと器用になっただけ。

梅の花の香りがする。
現実離れした気分にふと陥る。

現実に足をつけて立っていた足下がぐらつく。
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