伝えたい事がある


"池谷先輩"って言ってもあたしと特別関わりがあった訳じゃないけど初めて会った時に「池谷先輩って呼んで」って言われたからそうしているだけ。「何で"池谷先輩"なんですか?」って聞いたら「そう呼ばれるのが好き」って答えた。その時に良くわからない人だと思った。


最寄の駅から乗り換えをして大学の最寄の駅につくと、ちらほらと見知った顔が見えてきた。その中の1人があたしを見つけて歩き寄って来た。


「咲陽!おはよ」

「おはよ、リナ」


リナは高校からずっと一緒で大学の講義もほとんど一緒。意図的に合わせた訳じゃないけど偶然にほとんどの講義が一緒になった。


「ね、今日テストだって覚えてる?」


リナはあたしの前に立つと少し疑うような顔で聞いてきた。・・・まさかとは思うけど。


「テストだって忘れてた・・・の?」

「そうなの。もう咲陽メールくらいしてよおー。」

「どうすんの!ちょっと大丈夫なわけ?」

「やばーい。・・・けどその時はその時だよ」


どこかで聞いたことのあるセリフ。やっぱりあたし達は似てる。そう思って笑った。


「何笑ってんのー。やばいんだからね。これでも内心ドキドキなんだからね。ってことでテスト始まるまでノート見せてね」

「それぐらい全然見せるけどさあ。もうこれからは止めてよね」


・・・って言ってもあたしもお姉ちゃんにノート届けてもらわなかったらリナみたいにドキドキだったけどね。

歩きながら大学に向かってると池谷先輩の後ろ姿が見えた。


「リナ、ちょっと用事あるから先歩いててくれない?途中で追いつくから」

「わかった。なるべく早くね?ノート見せてもらいたいから」


リナはそう冗談っぽく笑って先に行った。リナの事は信頼してるし大好き。あたしがお姉ちゃんのことをコンプレックスに思ってることも知ってるし、お姉ちゃんと池谷先輩の関係も知ってる。


「池谷先輩!」


少し大きめな声で言うと池谷先輩はあたしの方を見て軽く手をあげた。


< 4 / 16 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop