伝えたい事がある
「池谷先輩どうしてここに?大学は?」
「今日は講義休んだんだ。って言っても最近はほとんど大学には行ってないんだ」
「就活ですか」
あたしがそう言うと先輩は少し声を上げて笑った。
「就活って言ってもあとは、内定を貰うだけ。ちょっとコネを使ったからその分他の皆よりは安心だな。」
池谷先輩はあたしが聞いて無いことまで丁寧に話してくれた。
「コネ?それお姉ちゃん知ってるんですか?」
「勿論、知ってるさ。」
「何にも言ってなかったんですか?」
あたしがそう言うと先輩はあたしが言いたかった事を理解した様で「あぁ。」と何かを思い出したように呟いた。
「まあ、アヤに話したときは怪訝そうな顔をされたし。いろいろと言われたけど。俺は入社してからが重要だと思ってるし、コネを使ったって言っても殆ど皆と同じ様に入社テストを受けたし。」
「いや、あの…。別に池谷先輩の事をせめてる訳じゃなくって。」
あたしは先輩が気分を害したかと思って必死に弁解した。
「わかってるさ。俺も責められてるつもりはないよ。ただ…。まぁアヤがそう言うズルみたいな事が嫌いだったとしても俺はチャンスがあればすがりつく奴なんでね」
先輩は、またもや丁寧に説明をしたあと
「悪いけど暇があったらアヤにこれ渡してくれる?」
そう言ってあたしに白い封筒を差し出した。
「勿論中身は見ないでね。まぁ、見たとしてもちんぷんかんぷんだと思うけど。」
…この言葉の意味は文字通りか、それともあたしがバカだから理解できないと言っているのか。
きっと前者だと思う。池谷先輩はそんな嫌味ったらしい事は言わない。あたしがひねくれてるだけ。
「言われなくても見ませんよ。帰ったら渡しておきますね。」