ガラスのタンポポ
「なあ、兄貴」


「ん?何だ、翔」


言うなら今だ。


オトばあとおばさんは、ちょっと離れた所で散歩している。


「オレ、奏来とつき合ってる」


兄貴は奏来から目を反らさず、ただ、


「そうか」


と、頷いてオレから離れ奏来へ歩み寄った。


何を話しているのだろう。


奏来の顔がどんな表情を作っているのか逆光で見えない。


時折頷いたり、首を横に振ったり。


行って、兄貴に、


「奏来はオレの」


と、言いたかったけど、奏来は兄弟同志で取り合うおもちゃじゃない。


「奏来はお父さん子だねぇ」


と、言うオトばあと、黙ってコンクリートにしゃがみこみ、昼間の太陽が夕日に染まりかけるまで2人の影をながめていた。
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