ガラスのタンポポ
帰りの車内は静かだった。


久しぶりに外出して疲れたのかオトばあは眠っていたし、奏来は助手席で何か思い詰めたように暗くなりかけた移りゆく景色を眺めていた。


空になった弁当箱と5人を乗せて、兄貴の借りたレンタカーはマンションの前へ滑り込んだ。


「聖ちゃん、今日は本当にお世話になったわね。また今度、晩ご飯食べに来てちょうだいね」


「いいえ、いつもお世話になってるのは、俺と翔の方ですから。翔、オトばあ送ってってくれ。俺は車返しに行ってくるから」


眠ったままのオトばあを奏来ん家へ送り、オレも自分の部屋へ帰ると、疲れと波打ち際で話し込んでいた兄貴と奏来の残像だけが頭の中をめぐり、あのキラキラした奏来の笑顔は、デジカメの中にだけしか残っていなかった。
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