ガラスのタンポポ
電話を切っても、まだ耳がジンジンする。


ケータイ越しの奏来の声だけでこんなにドキドキするオレって…かなり恋する乙女ならぬ乙男だ。


奏来も同じ気持ちでいてくれたら…。


ドキドキと同時に感じる焦り。


海へのドライブの日、兄貴と奏来は何を話したんだろう。


その後、奏来は何を思ったのだろう。


帰りの車の中で見せた、思い詰めたような表情は何だったのだろう。


何を考えたって、オレの奏来への想いは変わらないのだけれど。


寝そべっていたベッドの布団を軽く直したところで玄関のチャイムが鳴った。


夏用のワンピースに編みかごのバッグを持った奏来は、久しぶりに来るオレん家にちょっと戸惑っている様子で、


「おじゃまします…」


と、小さく言うと、丁寧に白いミュールを揃えた。


「オレの部屋で待ってろよ。今、奏来の好きなカルピス持ってくから」


「うん…」
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