ガラスのタンポポ
奏来がオレん家に来るなんて、何年ぶりだろう。


おじさんが亡くなり、オトばあの認知症が発病してから、会うのは学校か奏来ん家のどっちかだった。


彼女としてオレの部屋に来るのは、もちろん初めてで。


そう思うとオレも急に意識し始めて、カルピスを濃すぎず薄すぎずに調整するのに少々時間がかかった。


「奏来、お待たせ。つーか、何で立ちっぱなし?」


「あ…えっと…。翔ちゃんの部屋って、こんなだったかな、って…」


「んー、まあ、ガキの頃よりマンガ増えたりゲーム用のテレビ置いたりそんなモンだよ。座ったら?」


奏来は遠慮がちにワンピの裾を気にしながら、小さなテーブルに向かって腰掛けた。


「ハイ、カルピス」


「どうもありがとう…」


グラスの中の氷をカランと鳴らしカルピスを一口、口に含んだ奏来は、


「おいしい♪」


と言って笑った。
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