ガラスのタンポポ
あの時。


告白されたのだろうか。


兄貴を選べと言われたのだろうか。


奏来を前にすると心の余裕がなくなり、手が勝手に動いていた。


奏来の両肩を掴み、強く視線を絡める。


「奏来は…。奏来はどっち?オレ?兄貴?」


さっきまでこんな事聞くつもりなんてなかった。


でも聞かずにいれば、いつまでたってもオレと奏来の距離は変わらない。


だけど聞いてしまったら…。


聞いて「聖ちゃん」と答えが出てしまったら、その瞬間、目の前の奏来は消えてしまう。


聞いたくせに答えは聞きたくなくて。


オレは。


自分の唇を奏来の唇に重ねた。


柔らかく、次第に強く激しく。


奏来の熱い舌にオレを絡めて求める。


奏来を、奏来の心を求める。


押し倒すと、もう止まらなかった。


唇から首へ、胸まで唇を這わせると、ワンピを少しだけめくり小さな花びらのようなキスマークを1つつけた。
< 106 / 172 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop