ガラスのタンポポ
「翔ちゃん?数学のここんトコがわかんない」


「ん?あぁ、コレはな」


奏来は夏休み中、可能な限りオレの部屋に来る。


一緒にCDを聴いたり、こんな風に宿題をしたりするなんて事のない時間が、日、一日と増える度、兄貴への勝利だと証しているように思えた。


「な、数学はこのくらいにしといてさ。コレ、見て」


一枚のチラシを前に置くと、奏来はすぐに嬉しそうに笑った。


「わぁ♪お祭り♪」


「ならWデート、ってのはどう?真之と彼女のエリとオレと奏来。奏来も友達作れよ。エリとならきっと仲良くなれると思うよ」


ちょっと迷っていつものように長い睫毛を伏せたが、すぐに笑顔を作った。


「吉永くんとエリちゃんと行く!」


「ヨシ。ならソッコー連絡」


真之のケータイを鳴らすと、エリも一緒だったらしく、もちろんOKの返事。


「ソラ、何着て行こうかなぁ。新しい浴衣買おうかなぁ」


「奏来、ガキの頃から変わんねーから、まだ着られるんじゃねーの?金魚柄にクシャクシャの帯のヤツ」


「むにーっっっ!翔ちゃんっ!ソラ大人だもんっ。もうすっごいセクシー路線でいくからっ」


「ほほぅ。それは楽しみ」


笑みを交わしてキスをした。
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