ガラスのタンポポ
「ごめんなさいね、聖ちゃんも翔ちゃんも。聖ちゃん、お仕事の最中だったんでしょ?」


「いえ、俺ならいつでも。オトばあに何かあったらすぐに俺に電話してください。な、奏来?」


「ごめんなさい…。どうしたらいいのかわからなくなって…。お仕事なのに…ごめんなさい…。翔ちゃんもごめんね?せっかくお祭りに誘ってくれたのに行けなくて…。いつも2人に迷惑ばっかりかけて…」


「迷惑だなんて思ってやしないさ。子供の時からオトばあは俺達のオトばあでもあるんだから。奏来、そんな風に思い詰めるな」


オレの言いたい事を兄貴はスラスラと言葉にし、奏来を慰めてしまう。


オレが奏来を癒したいのに。


何も言えずコーヒーを飲み干した。


時々、奏来の啜り泣く声だけだダイニングに響いていた。


「また、花火の時間まで間に合うでしょ?奏来、支度して行ってきなさい。お母さんの浴衣、着せてあげるから」


奏来は静かに首を振った。


オレだって、そんな気分じゃない。


「奏来、翔、行くぞ。俺だってせっかく仕事切り上げて来たんだ、射的でもたこ焼きでも何でもおごってやるぞ?」


「ホラ、奏来」


おばさんは無理矢理奏来を部屋に連れて行き、支度を始めた。
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