ガラスのタンポポ
「奏来、午後の授業サボってさ、オトばあが帰って来るまで時間あるから、真之とエリとカラオケでも行こうぜ」


悔しいけど兄貴の言う通り、無理矢理でも気持ちを違う方向へ持っていかないと奏来が壊れてしまいそうだった。


「ソラ…行けない…」


「行くったら行くぞ。ホラ、机ん中の物出せ。オレが鞄ん中しまっちゃる」


あれ以来沈んだままの奏来を、なんとか浮かせようとオレなりに必死だ。


奏来の気持ちが痛い程わかる。


でも、兄貴の言う通りにしなければ、奏来はどうにかなってしまう。


狭間に揺れるオレにできる事なんて、ちっぽけで役になんて立てないかもしれないが、思いつくままできる事をやってみようと思った。


嫌がる奏来の背中を押し玄関まで行くと、真之達が待っていた。


「おせーよ、翔。昼飯もまだなんだから、早く行こうぜ」


「奏来ちゃん、具合でも悪いの?」


エリに心配されると気を使うのが、気が紛れるのか、奏来は笑顔を作る。


「ううんっ、平気!ソラ、カラオケなんて初めてでキンチョーかも」


「今時初めて!?なら行くっきゃねーよ、内海」
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