ガラスのタンポポ
時々、4人で授業をサボって遊ぶように仕向けてから、奏来とエリはすぐに仲良くなった。


エリは気さくで姐御肌タイプ。


事情アリの奏来を気遣ったり、ナイーブな家庭内の事に当たり障りなくかわすのがうまいタイプで、正直助かる。


話しながら歩き最寄りのカラオケボックスに到着すると、真之はメニュー表を、エリはリスト本を真剣に見始め、それを見て奏来は笑った。


日に一度でも笑ってくれればいい。


それ程に奏来にとっては毎日が過酷で耐え難い日々だった。


オムツを取り替える、オトばあの口元までノロノロと食事を運ぶ、少しでも良い方へ向かうよう話しかけたり、夜は薬を飲ませて眠りにつくまで見張る。


もちろん、オレもおばさんも一緒だけれど、誰よりおばあちゃん子だった奏来にとっては、オトばあが壊れていくのを見るのは一番しんどいはずだった。


兄貴も前にも増してオトばあの様子を見に来るが、オトばあの口から「孝司」というおじさんの名前すら出なくなっていた。


長い長い1日をなんとかやり過ごす奏来は、少し痩せたような気がする。
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