ガラスのタンポポ
バスが目の前に停まり、オレ達をマンションまで運ぶ。


奏来ん家に上がると、制服のまま奏来は濃いめのインスタントコーヒーをリビングのテーブルに置いた。


ソファーの隣に座ろうとする奏来をオレは膝の上に乗せた。


「翔…ちゃん…?」


「さっきのゴメンの分。キスの刑。目、閉じろよ」


「うん…」


テレビの音もしない、聞こえるのは秒針を打つ時計と激しく動く自分の鼓動。


奏来も同じようにドキドキしていてほしい。


それを感じたくて、オレは、奏来の胸に手を置いた。


トク…トク…トク…。


小鳥の心臓じゃないかと思う程、頼りない奏来の胸の音。


でも、それを感じるだけで安心できた。


奏来はちゃんと生きてるから。


生きてるなら笑えるから。


唇が離れると奏来はオレの首に腕を絡めた。


そうだよ。


甘えてくれよ。


小さな奏来くらい、いつでも受け止めてみせるから、さ。
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