ガラスのタンポポ
一一一バンッ!!


鞄を放り投げると、オトばあの肩がビクンと跳ねた。


瞳は彷徨い、泳ぐ手は兄貴を求めてる。


兄貴は冷たい目でオレを見た。


「かき乱すつもりなんてないさ。こもった空気の中にいる人間には、ちょっと新しい風が必要なだけ。焦るな、翔。お前はお前のペースを守れ」


「やってるさッ!それを奪ってるのが兄貴だっつってんだよッ!!」


「奪うつもりはない。奏来が好きなのは翔だよ。今はそれでいいかもな。でも言っておく。将来必要なのは…誰だ?」


何だよ。


何が言いたい?


好きという感情以外に何がいる?


オレには見えてない将来が兄貴には見えてるっていうのか?


「翔ちゃん、もうやめて…。おばあちゃんが…おばあちゃんが怖がってる…」


オレは奏来を強く抱き締めた。
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