ガラスのタンポポ
毎日、オトばあの所へ通った。


肺炎なんてすぐに良くなると思っていたけれど、病気と戦う気力も体力もないオトばあは、日に日に痩せ衰えていった。


ついに酸素マスクを払う気も失せてしまったのか、おとなしくマスクをし、1日中眠っている。


そんなオトばあの呼吸を確かめたくて、奏来は時々オトばあに話しかけた。


「おばあちゃん…」


うっすらと目を開けるだけで、返事はない。


口から栄養の摂る事のできないオトばあに繋がれた点滴の雫の落ちる音だけが、虚しく耳についた。


そんな日々が繰り返されて3週間。


奏来は学校には来るが、心ここに在らずで、授業中シャープペンを走らせる事も、休み時間に介護書を開く事もしなくなった。


「奏来?」


「ん…翔ちゃん…」


「おにぎり食わねーの?」


「うん…。まだ喉が痛いの」


喉の違和感は訴えるけど、これといって風邪の症状はない。


「ホラ、コーヒー牛乳。飲み物だけでもいいからカロリー摂れ」


「うん…。ありがとう」


ストローをさして小さな口でコーヒー牛乳を飲む奏来を、黙って見ているしかなかった。
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