ガラスのタンポポ
タクシーの運転手からおつりも受け取らずに病室へ走った。


611号室。


おばさんと兄貴が静かにベッドの上のオトばあを見つめていた。


「お母さん、おばあちゃんは!?」


奏来がオトばあの手を取る。


「おばあちゃん…?おばあちゃん!!」


オトばあはうっすらと目を開いて見た先は。


一一一兄貴だった。


「たか…し…」


その一言を残し、オトばあの呼吸が止んだ。


オトばあはあっけなく。


この世を去って逝った。


もう戻ってくる事のない世界へ。


「…っ…っ…うぅ…」


奏来が涙を流すのを止めようとは思わなかった。


今まで存分に辛さを味わった分だけ、思い切り泣いてほしかった。


オレんトコロで。


でも奏来が選んだ泣き場所は。


兄貴の腕の中、だった……。
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