ガラスのタンポポ
「翔ちゃんが買ってくれたね?」


「相当気に入ってんな?」


「うんっ♪もう一回、指にはめてくれる?」


「いいよ」


ストラップの紐が邪魔だったけど、薬指に指輪をはめると、奏来はオレの肩にもたれかかり、いつまでも手をかざして見ていた。


太陽の光はなくても、時々街灯の光で煌めくガラスのタンポポ。


「あ、そうだ。ねぇ、翔ちゃんのケータイ貸して?」


オレのケータイを奏来の手に渡すと、音声メモの機能を起動させた。


「翔ちゃん、ありがとう。大好きです」


それだけ言うと満足気に微笑み、オレの手に返す。


「あのね、それ消しちゃダメだよ?」


「…うん」


「奏来の声、忘れちゃイヤだよ?」


「うん」


「翔ちゃん…」


「ん?」


「キスしてほしい…」


潤んだ瞳を閉じて待つ奏来の唇にオレを重ねた。


奏来の涙の味のキスの意味など、この時のオレには知るはずもなかった。
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